有利にならなかった例-有利な離婚
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ここでは、明らかにあなたに有利な離婚であるはずが、五分五分の展開になってしまった事例を紹介します。
有責配偶者の判断が、いかに難しく危ういものであるか、深く認識して離婚に望むことが大切です。
ある日、夫が家を出て行ってしまい、あなたには思い当たる節がありませんでした。
夫が浮気していると感じていましたが、とうの昔に夫婦関係は冷え切って婚姻生活の継続は難しく、あなたは離婚を決意します。
浮気は貞操義務に反し、家を出ていくのも同居義務に反しますから、自分に責任は無いあなたは、夫の責任として離婚の際に慰謝料を求めることにしました。
たとえ慰謝料で貰えなくても、財産分与で慰謝料に相当する額を受け取る権利はあると考えます。
夫は離婚に同意しましたが、財産を渡したくないために協議に応じず調停に持ち込みます。
それでも、夫が悪いのだから簡単に調停委員もわかってくれるだろうと思っていました。
誰がどう考えても、浮気をしているなら夫が悪く、浮気をしていなくても出ていくほうが悪いに決まっているからです。
ところが夫は、あなたの素行や性格、それだけではなく事実と異なることを家を出た理由として調停で主張します。
そしてそれは、夫にとって非常に苦痛であり、やむを得ず家を出たのだと悪びれず言い切ります。
要するに、家を出た原因を作ったのはあなたで、自分は耐えられなくて家を出たのだという信じられない内容でした。
もちろんあなたは事実無根と反論し、夫の浮気についても主張しますが、さて、この時点で確定している客観的な事実は何かあるでしょうか。
唯一わかっているのは、夫が家を出たという点ただ1つです。
夫が家を出たことに離婚原因があるなら、その理由が焦点になって当然でしょう。
そして、あなたの素行や性格が、夫にとって耐えがたいものであったかなど、夫以外には誰もわかりません。
夫が家を出た理由として嘘をついていても、夫は当然事実と証明できませんが、あなたも虚偽だと証明は難しいでしょう。
更には、夫の浮気について確証もなければ、現に女性と暮らしていたとしても、関係が始まったのは家を出た後だとされるとお手上げです。
第三者である調停委員は、中立的な立場で双方の主張を聞き、話し合いでの解決に助言するのが役割です。
ですから、子供が関与すると別ですが、主張が真実であることを突きとめるために、調査のようなこともしません。
家庭裁判所調査官という職もあるとはいえ、調べようがないことは権限があっても調べられないからです。
この状況下では、いくら話し合っても平行線で、双方に落ち度があるなら50%ずつの財産分与でどうかと、調停委員が提案しました。
「冗談じゃない!」
腹に据えかねているあなたは思いますが、夫にしかわからない「あなたの落ち度」について言い争っても無駄で、浮気についても主張できないのであれば、仕方がない結果でした。
このように、相手が証明もできない虚偽の内容を主張したり、相手に原因があるように主張するのは、調停での常套手段です。
本当は確実に有責で不利なのに、最悪でも痛み分けのような形で終わらせれば、それだけで成果なのです。