法定離婚原因-2.悪意の遺棄
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夫婦には相互に助け合って生活していかなければならず、従って同居、協力及び扶助の義務が民法に定められています。
悪意の遺棄とは、「わざと」夫婦の義務に協力しないで放置する行為で、これは婚姻を継続することの重大な障害となるために、法定離婚原因として認められます。
要するに、共同生活に非協力的な配偶者とは離婚が認められやすいということですね。
悪意の遺棄の代表的な事例として、生活費を渡さない、別居する(出て行く・追い出される)という2つがあります。
生活費について
夫婦には婚姻関係を維持するため、つまり生活していくための費用を分担する義務があり、生活費を渡さないというのは義務違反です。
多くの家庭では、一方が収入を得るために仕事をし、もう一方が家事や育児を担当する形態が多いですが、これは生活をしていく上で不可欠な協力であり、形式上そうなっているだけに過ぎません。
また、一方が生活費を渡さないかわりに他方が一切の家事を放棄したところで、収入が無いほうは生活できないので、その時点では収入のあるほうに、互いが同程度の生活をしていけるだけの分担義務があるということです。
ですから、収入があって生活費を渡さないというのは、婚姻関係を継続する意思がないも同然の行為で、故意なので完全に悪意の遺棄に該当します。
ちなみに、家事を放棄することも非協力的な行為なので、協力及び扶助の義務に違反しています。
別居について
別居というのは、必ずしも悪意の遺棄には該当しないので、別居を理由に離婚訴訟を起こすときには注意しなくてはなりません。
例えば、転勤で単身赴任になり別居している、夫婦関係の調整などお互いに合意の上で別居しているといった別居については、悪意の遺棄には該当しません。
しかし、合意の上の別居であってもお互いの生活を成り立たせるための費用負担義務はあり、働けない理由がある配偶者に対して生活費を送らないと悪意の遺棄に該当します。
生活費を送ったところで、理由無く夫婦としての同居義務を怠っていれば、やはり悪意の遺棄です。
その他で悪意の遺棄に該当するとすれば、家事もせず働きもしないで一方に負担を押し付ける、実家に帰ってしまう(妻側に比較的多い)など、本来は配偶者と協力しなければ成り立たない夫婦生活を、故意に協力しない行為は全て広い意味で悪意の遺棄です。
ただし、実は悪意の遺棄という点だけを理由に離婚請求をすることにはあまり強い意味がありません。
なぜなら、悪意の遺棄が無くなって生活費を渡すようになったり同居するようになったりすれば、円満な婚姻生活に戻れるかといえばそうではないでしょう。
悪意の遺棄が始まるまでには、何かしらの別な要因があるのが通常で、悪意の遺棄が主たる理由ではないことがほとんどだからです。
そのため、悪意の遺棄による離婚請求は多くはなく、婚姻を継続しがたい事由の1つとして悪意の遺棄に該当する内容が含まれているケースが多くあります。