子の引渡しと強制執行

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子の引渡しと強制執行

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家庭裁判所には、履行勧告や履行命令という事実上の強制力を持たない方法で、子の引渡しを求める手続きも用意されています。

当然ですが、子の引渡しが請求されるような状況下では、履行勧告や履行命令に応じて子供が返されるケースは少ないでしょう。

そこで、子の引渡しを請求した側は、審判前の保全処分か子の引渡しの審判(調停成立も含む)を使って、強制執行を試みることになります。

強制執行には、命令に従わなければ金銭を課す間接強制と、子供の身柄を確保する直接強制に分かれますが、どちらも利用されているのが現状です。

直接強制は、言ってみれば連れ去られた子供を国家権力で取り戻すに近いため、そもそも許されるかどうかについて争いがあります。

しかしながら、子供を連れ去った拘束者に対し、間接強制で金銭を課したところで、その負担に耐えかねて子供を返すとは思えず、直接強制が許されないと実効性を伴わないとして、ある程度は実行されています。

直接強制の場合、地方裁判所の執行官が執行する(子供を確保して引渡す)のですが、子の引渡しを求める直接強制は、金銭や財産の差押え等とは異なってかなり特殊です。

子供をモノ扱いして良いのかという議論が当然起こり、子供が拒絶の意思を示しているときは、なおさらされるべきではないと考えられています。

そのため、子供がその意思を示すことができない乳幼児期においては直接強制が認められやすいのに対し、幼くても子供が拒絶するときは、仮に直接強制が認められたとしても、執行不能になってしまいます。

また、乳幼児だからといって、子供を抱きかかえたまま返さない拘束者に対し、力ずくで子供と引き離すような行為は、逆に子供の心身に傷を残す可能性も高く、やはり執行不能となるでしょう。

さらに最高裁は、公道や保育園での直接強制を認めない方針を通知したため、直接強制の機会はそれだけ失われ、拘束者の自宅などで行うことになります。

当然ながら、不意打ちの引渡しは望めず、拘束者の抵抗も考えられるところで、ますます直接強制の難しさが際立ったと言えるでしょう。