親権と子の引渡し
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親権者には子供の居所を指定する権利がありますが、子供の意思を無視してまで、強制的に居所を指定できるほどの権利ではありません。
親権は子供のために行使される権利義務で、子供を親に従わせる権利ではないからです。
しかし、子供が幼くて自らの意思を示せない場合や、子供の意思に反して連れ去られた場合で、親権者が許容しない場所に子供がいれば話は別です。
親権者または監護者は、現在子供を監護している者に対し、子の引渡し請求をすることになります。
子の引渡し請求は、子供が自分から離れることで、親権や監護権が実質的に妨害されてしまう状況から、親権や監護権の妨害排除を根拠としています。
ところが、婚姻中の共同親権ならまだしも、離婚後の単独親権では親権を持たない側が存在するので、子の引渡し請求に親権妨害を根拠にできないのです。
だからといって、親であることは生涯変わらず、対処方法がないわけではありません。
民法では、家庭裁判所が必要だと認めれば、離婚時に父母が決めた子の監護に関する内容でも、変更して処分を命ずることができると定めています。
ですから、親権や監護権がなくても子の監護に関する処分として、子の引渡し請求をすることは可能です。
もっとも、子の引渡し請求は、虐待など危険からの保護を除くと、親権や監護権を持つ側からされなければ根拠がないため、親権者の変更や監護者の指定を伴って請求されます。
その結果、子の引渡し請求は、親権者から行われるか非親権者から行われるかで、次のように区別して考える必要があります。
- ・親権者から親権者に行われる場合(婚姻中の別居)
- ・親権者から非親権者に行われる場合
- ・非親権者から親権者に行われる場合
- ・非親権者から非親権者に行われる場合
最後の非親権者から非親権者へ引渡し請求がされるのは、あまり例がないように思えますがそうでもありません。
例えば離婚で親権者となった側が、子供を監護していたのに亡くなってしまい、祖父母が監護していたところ、存命の実親が引渡しを求める場合などがあります。